肝細胞癌(外側右葉&尾状葉尾状突起)
雑種犬、避妊雌、13歳2カ月、体重14.25kg。20日前に嘔吐と血便を主訴に当院を受診した際の腹部エコー検査にて、肝臓右側区域にモザイクパターンの腫瘤を認める。内科的治療にて嘔吐・血便が治まった後、肝臓腫瘤切除を目的に来院した。当院での血液検査では、肝酵素の著明な上昇を認め、腹部エコー検査では、20日前同様にモザイクパターンの腫瘤像が肝臓右側区域に認められた(図1、2)。胸部レントゲン検査では肺野に異常は認められず、腹部レントゲン検査では右前腹部に不透過性の腫瘤陰影を認めた。肝臓右側区域の腫瘤切除を目的に、4日後に手術を実施した。なお術中に200mlの輸血を実施した。
腹部正中切開にて開腹。肝臓外側右葉と尾状葉尾状突起由来の腫瘤(手拳大)を認めた(図3)。まず出血に備え、肝十二指腸間膜を切開し、門脈、肝動脈、総胆管を確保した(プリングル法。図4)。次に、外側右葉と尾状葉尾状突起の門脈・肝動脈・胆管を確保(図5)し、結紮・切離した。続いて、超音波外科吸引装置(Sono Cure)を用いて、右肝静脈と副右肝静脈を露出して結紮・切離し、腫瘤を外側右葉と尾状葉尾状突起とともに摘出した(図6、7、8)。この後、腹腔内を洗浄し、定法に従い閉腹した。病理組織学的検査にて、摘出した腫瘤は肝細胞癌であった(図9、10)。
術後の経過は良好で、術後6日に退院とした。現在術後8カ月が経過するが、良好に推移している。