先天性門脈体循環短絡症(門脈シャント。猫)
マンチカン、雌、5カ月齢、体重1.2kg。多量の流涎を主訴に当院を受診。
当院での血液検査にてアンモニアの高値(568μg/dl)を認め、また腹部エコー検査にて異常血管を認めた(図2)。門脈シャントを疑い、他院にCT検査を依頼したところ、シャント血管(左胃静脈?を介した門脈・奇静脈短絡)が認められ(図3、4)、後日当院にて短絡血管閉鎖術を実施した。
腹部正中切開にて開腹。後大静脈は重複後大静脈であった。短絡血管を露出・確保した後(図6、7)、腸間膜静脈を確保し、門脈圧の測定と門脈造影を実施。門脈圧は短絡血管遮断前3mmHg(図7)、完全遮断後24mmHg(図8)であったため、短絡血管の部分結紮を実施し(部分結紮後の門脈圧は10mmHg。図9)、短絡血管に誘導糸(2-0ナイロン糸)を設置した。この後、肝生検を実施し、腹腔内を洗浄し、閉腹した。術後の経過は良好で、流涎などの臨床症状は消失した。術後2カ月後に2回目の手術を実施。門脈造影にて肝内門脈枝は良好に発達していた(図10)。前回手術時の誘導糸(図11 矢印)を結紮し、短絡血管を完全閉鎖した。この後、卵巣子宮摘出を実施し、閉腹した。2回目の手術後の経過も良好で、現在2回目手術より13カ月が経過するが、、良好に推移している。