胆嚢粘液嚢腫(総胆管破裂併発)
雑種犬、去勢雄、9歳、体重5.3kg、体温39.1度。2日前からの嘔吐と食欲廃絶を主訴に来院。身体検査では可視粘膜の黄疸、皮膚脱水を認め、腹部触診では疼痛を認めた。血液学的検査では赤血球数とHct値の上昇、左方移動を伴った総白血球数の増加を認め、血液化学検査では総タンパク、アルブミン、総ビリルビン、肝酵素、総コレステロール、CRPの上昇、カリウムの低下を認めた。腹部レントゲン検査では肝臓の腫大を認め(図1)、腹部超音波検査では、胆嚢内に胆嚢粘液嚢腫を疑わせる放射状の高エコー像を認めた(図2)。胆嚢粘液嚢腫と診断し、静脈内持続点滴を中心とした内科的治療を1日実施した後、手術を実施した。腹部正中切開にて開腹すると、胆嚢は腫大しており(図3)、腹腔内にゼリー状の胆嚢内容物を認めた(図4)。胆嚢に破裂箇所はなかったが、総胆管が縦に大きく裂けている部分が認められた(図5)。胆嚢を肝臓より剥離した(図6)後、胆嚢を切開して内容物を除去(図7)し、順行性に総胆管の洗浄を実施した。次に十二指腸を切開して、総胆管内に8Fr栄養カテーテルを挿入した状態(図8)で6-0モノフィラメント糸にて破裂部位の縫合を行った(図9)。なお8Fr栄養カテーテルを総胆管ステントとし、十二指腸に縫合固定した(図10)。また腹腔ドレーンも留置した。この後、十二指腸の縫合、胆嚢切除、肝生検を行い、腹腔内洗浄後、定法に従い閉腹した。病理組織学的検査にて、胆嚢は壊死、肝臓は化膿性肝炎であった。総ビリルビン、肝酵素などは手術翌日より漸次改善傾向を示した。術後3日間は腹腔ドレーンより胆汁の漏出を認めたが、術後4日には漏出が認められなくなり、術後5日に腹腔ドレーンを抜去した。術後3日には食欲を認め、術後9日に退院とした。なお総胆管内のステントは術後26日に糞便中に自然排出した。現在術後約6カ月が経過するが、ALPとGGTに若干の上昇が認められる以外は良好に推移している。