胆嚢粘液嚢腫(胆嚢破裂併発)
チワワ、避妊雌、11歳9カ月齢、体重1.6㎏、体温38.9度。3日前に嘔吐と食欲廃絶を主訴に他院を受診。3日間内科的治療を実施するも改善が認められず当院を受診した。なお当院受診2日前に腹水の貯留を指摘されていたとのことであった。当院の血液検査では左方移動を伴った総白血球数の上昇、総ビリルビン濃度と肝酵素、血液尿素窒素、クレアチニン、クレアチニンキナーゼ、FDPの上昇、血小板数とアルブミンの低下を認めた。腹部レントゲン検査では、腹腔内はすりガラス様で、肝臓の腫大を認めた。腹部超音波検査では不整形の胆嚢と胆嚢周囲に胆嚢内容物と思われる高エコー物を認め(図2)、さらに腹水貯留を認めた(図3)。胆嚢粘液嚢腫による胆嚢破裂および胆汁性腹膜炎と診断し、静脈内点滴と輸血を中心とした内科的治療を数時間実施し、同日外科的治療を行った。腹部正中切開にて開腹すると茶褐色の腹水を多量に認めた(図4)。胆嚢は破裂しており、その周囲に血餅とゼリー状の胆嚢内容物を認めた(図5)。腹腔内を洗浄後、胆嚢を肝臓から剥離し(図6)、胆嚢破裂部よりカテーテルを挿入し、順行性に胆管洗浄を行った(図7)。その後、胆嚢切除、肝生検を行い、再度腹腔内洗浄を実施した(図9)後、腹腔内にドレーンを設置し閉腹した。病理組織学的検査では、胆嚢は壊死、肝臓は化膿性炎症であった(図10)。なお術中に採取した腹水の細菌培養同定検査は陰性であった。術後は重度の低アルブミン血症が認められ、術後2日目に低アルブミン血症に続発した肺水腫により呼吸状態の悪化が認められた(図11)が、マンニトールの投与と輸血により改善を認めた(図12)。その後も一進一退の状態が続いたが、術後7日目より食欲が認められ、術後14日目に退院とした。現在術後2年が経過するが、良好に経過している。